気づきのタネ #1
こころの豆知識の中のコラムの1つとして「気づきのタネ」も始めてみます。
「気づきのタネ」では主にマインドフルネスや心に関する文献や科学的な知見も一緒に取り上げながら、マインドフルネスを通して心や生活を見るとどんなことが見えてくるのか。そんな話をしていければと思います。
しかしいざ書き進めようとすると、何を目的とするのか、これは書いて良いのか、どこまで言って良いのか、等々表現することの難しさに気づきます。さらに人からの評価を気にしている自分に気づきますし、そんな状況だからこそ難しいと評価する心の動きに辟易としていることにまた気づいたりしています。こうして自分の心がどう反応しているのかに気づいていくと、「評価」や「成果」を出さないといけないという考えに絡め取られていることにまた気づきますが、このような気づきはよくあることなのでしょうか。
ここで1つマインドフルネスに関連する研究を紹介しましょう。中野(2022)は、職場で取り組めるようなマインドフルネスプログラムを検討し、職場でマインドフルネスが導入される際に重要な要素を挙げています。①明確な効果や目的が十分に説明されていること、②体験前の説明により納得していること、③スモールステップで達成感を得られる構造、という3点です。この指摘を見ると、自分への労りを目的としたマインドフルネスに取り組むにも人は「成果を出す」という考えからは抜け出しにくいようです。この3点の要素について中野(2022)は「問題を解決しようとマインドレスに駆り立てられている”Doingモード”」と指摘しています。
人は自分自身を守る1つの方法として成果を出さなければいけないという考えを持つことがあります。現代社会において仕事をすることと成果を出すはほぼイコールですし、その考えが強くなるのは仕方のないことなのかもしれません。しかしこの考えが強くなることのデメリットとしては、成果を出せない自分を責めることに繋がることでもあります。成果を出さないでいいと言うのもまた違うと思うでしょう。成果を求める自分に気づいた後に自分をどう守るのか、何を大事にすることが自分を守ることになるのか。マインドフルネスの取り組む中で大事な要素の1つである「自分自身を受け入れて癒やす」方法を見つけることがそのヒントになるかもしれません。マインドフルネスに取り組む際には成果やこうあらねばならない等どんな囚われが自分にあるのか気付く取り組みになるかもしれませんし、それは同時に自分を守る新しい方法のヒントになるのかも、と思ったりもします。
<引用文献>
中野美奈(2022). 産業・労働分野に求められるマインドフルネスプログラムの検討 安全衛生委員を対象に, 脱中心化と職場での応用に焦点を当てたプログラムの事前検討 マインドフルネス研究, 7(1), 50-55. https://doi.org/10.51061/jjm.71_5
文責:中村嘉宏