マインドフルネスの広場 in 六甲
こころの豆知識 気づきのタネ

気づきのタネ #2

 「気づきのタネ」では主にマインドフルネスや心に関する科学的な知見や文献を取り上げながら、マインドフルネスを通して心や生活を見るとどんなことが見えてくるか、そのような話題を取り上げています。
いきなりですが、皆さんはマインドフルネスのスキルを使いこなせているといった実感はありますでしょうか?難しいスキルでよくわからない、という方が多いかもしれません。かくいう私もその1人です。私が特に難しさを感じるのは、継続的に続けないとすぐにそのスキルや実践で培った感覚を忘れて今まで通りのパターンを繰り返してしまう、という点です。継続は力なりともよく言いますし、実際、マインドフルネスのスキルの定着には継続することが大切と言われていますし、継続的な実践機会を持っておけるようにすることはマインドフルネススキルの定着には重要といえます。そう考えると、継続的に実践する環境を整えていくことは定着の助けになると捉えることが出来ます。
 マインドフルネスの広場in六甲ではマインドフルネススキルを実践するために様々なプログラムを提供し、その殆どはWebサービスでも受けられるようになっており、直接対面することなく利用可能なプログラムが多くあります。コロナ禍を契機としてWebサービスを介してコンテンツを提供する形は大きく脚光を浴びていますし、オンラインのメリットとしてあるのが自分が取り組みやすいタイミングでオンデマンド・アーカイブを利用して取り組めため、継続的な利用がしやすい、ということが挙げられます。しかし、ここで1つの疑問が浮かぶかもしれません。それは「直接対面なくWebで取り組んだとして効果はあるの?」という点です。こう考える方も少なくないかもしれません。今回の気づきのタネはこの疑問を解決するためのヒントになる実証研究を1つ紹介したいと思います。
 Vesa, Liedberg, & Rönnlund(2016)はマインドフルネスプログラムを2週間に渡りオンラインで提供する取り組みを行いました。その結果、プログラム参加者のマインドフルネススキルの向上と、ストレスと不安感の低減、抑うつ症状の改善が見られました(なお、参加者については1週間目から効果が確認され、プログラム非参加者では同じ項目における改善は見られませんでした)。Vesaらがさらに分析したところ、マインドフルネススキルの向上がストレスや不安感、抑うつ症状を改善する要因になっているという結果も示されました。
対面する場所に行く手間やコスト、自分の活動時間帯と取り組む時間帯を合わせることを考慮すると、対面式のプログラム利用が難しい方も多いかと思います。しかし、オンラインを用いた実践で十分に効果が望めるのであれば、継続的な実践機会を保ちやすいオンラインでの取り組みはメリットが多いと言えます(自分のペースで実践機会を持つことが出来るのがオンラインで行う際のメリットであることはVesaらも指摘しております)。
 Vesaらのオンラインプログラムでは、呼吸をアンカーとした実践を4種類、ボディスキャンの実践を3種類のいずれかを10分間行うためのプログラムが提供されていました。マインドフルネスの広場では呼吸やボディスキャンの実践に加えて、五感を使った10分間マインドフルネス実践、瞑想、ヨガで身体を動かしながらの実践、お茶を飲みながらの実践、といった複数のプログラムを展開しており、参加者の利用の仕方に合わせなつつ、オンデマンド・アーカイブ視聴をしながら取り組むことが可能となっています(オンデマンド・アーカイブ利用はできませんが、マインドフルネスストレス低減法8週間コースはオンラインで受講できます。詳しくは当HPのhttps://mindfulness.arimahp.or.jp/plan.htmlを御覧ください)。
 私達は家庭や社会といった中で様々な役割やするべきことに囲まれて生活しています。しかし、役割やするべきことばかりが優先になってしまうと自分へ向けるいたわりや優しさが疎かになり、様々なきっかけから生じるストレスに気づけなくなったり、対処や休養ができなくなります。ストレスと上手に付き合うためには、ストレスや疲れを感じている自分に気づき、いたわりや優しさを自分に向けながら、今の自分に必要な休養を取ることも重要です。マインドフルネス実践は自分への気づき、そしていたわりと優しさを向ける助けになるために重要ですし、その為にも継続していくことが大切、という点を強調しておきたいと思います。
 オンラインでのマインドフルネスの取り組みの紹介に加えてマインドフルネスの広場で展開しているプログラムの紹介もあり、手前味噌な話になりましたが、取り組み始めは長い時間が苦痛に感じることも少なくないことや、少しずつ取り組めるように今回の内容がマインドフルネス実践継続の一助になればと思います。

文責:中村嘉宏

<引用文献>
Vesa, N, Liedberg, L,& Rönnlund, M. (2016) Two-week web-based mindfulness training reduces stress, anxiety, and depressive symptoms in individuals with self-reported stress: a randomized control trial. International Journal of Neurorehabilitation, 3,3. 1000209
https://doi.org/10.4172/2376-0281.1000209

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